想いは硝子越しに
言えない。

お兄ちゃんがあんな事言ったなんて絶対に知られたくない。

自分の中に燻る嫌な気持ちを吐き出すように二、三度首を左右に振ると、何時も通りの笑顔を浮かべてしゃもじを手に取って炊飯器の蓋を開けた。
炊き立てのご飯のいい香りが鼻をくすぐって、グ~ッっとお腹が鳴ってしまう。

「あはは…とにかく食べようよ!もうすぐパパさんも帰ってくるでしょ?ご飯、よそうね!」
「あ、お願い。」

お兄ちゃんが何を考えてるかなんて、私には判らない。でもこのままでいい訳がないんだから。

どうにかしなきゃと心の中で気合を入れてから、腹が減っては戦は出来ぬとばかりに目の前の夕食に顔を綻ばせた。






































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