カシスオレンジみたいな恋
「んーもーちょい上かな?」
「いや、上げすぎですよ」
「あ、今平行になってますよ」
そうしてようやく校舎の入り口に
『第14回 高校 文化祭☆』
と書かれた看板がかけられた
「お疲れ様です。不器用先輩」
「誰が不器用先輩だよ。松井だ。松井先輩」
松井 聖也(まつい せいや)
それはこの高校の生徒会長の名前
ここにいる不器用な先輩のこと
そんな先輩はブスッと頬を膨らましたかと思うとやれやれとばかりに頭を掻きながら
ヒョイッと爽やかに脚立から飛びおりた
こう無駄にかっこいいところが
嫌い
「何?俺のこと好きになっちゃった?」
そう言って私の頭をぽんぽん撫でながら自信家な笑みを浮かべるところも嫌い
「まさか
先輩みたいなヘタレさんに惚れるわけないじゃないですか」
と言いつつもなぜか高鳴る鼓動
「かわいくねぇーな」
「知ってます」
自分でも可愛くないってわかってる
そんな可愛くない私が一番嫌い
ホントは先輩が好きなくせに
自分自身にまでウソをついている素直になれない私が一番大嫌い
私は私自身である佐藤 美優(さとう みゆう)が一番大嫌い