カシスオレンジみたいな恋
「うっし、お疲れ」
「お疲れ様です」
あれから拗ねた先輩は真面目に机の上の資料を整理し始めたため、私も無言で片付けを手伝い約1時間
ようやくきれいになった教室
数週間前から文化祭行事の打ち合わせや看板作りで忙しくて、資料やらなんやらが散らばっていた机の上は
今はまとめられた資料だけがのっているだけ
「明日は前夜祭だな」
「そうですね。 冬の文化祭なんて、私初めてなんで楽しみです」
「だいたい文化祭といえば秋だもんね。この学校は珍しく冬だけど」
うちの高校は冬が文化祭
そしてこの文化祭が終われば3年生は卒業する
「先輩も、来年は卒業ですね」
「...…そういえばお前今日泊まるよな?」
「えっ? まぁ、はい…」
私の発言は無視かよ
なんて思ったけど
先輩のやけに真剣な顔に少しチクリと何かが刺さるような感覚がした
「俺、卒業したくないな」
呟くように先輩は俯きがちにそう言うと
滲んだ瞳が一瞬見えて
フイッと私に見られないように窓から覗く藍色の空を見つめた
「せんぱ......」
「 ねぇ?
ミユは俺が卒業するの......どう思う?」