カシスオレンジみたいな恋
「じゃあ、行ってくるわ」
そう言って出て行くのを私は俯きながらに聞いていた
この教室から出て行こうとする先輩の足音が嫌に耳に響き
きつく締め付けられた心に
ポロポロと欠けていくのは涙だった
泣いちゃだめだってわかってる
泣いたらこの素直な私に先輩が気づいてしまう
そしたらなんて返せばいい?
先輩に迷惑はかけられない
そう思っていたのに
欠け落ちる涙は私の心を凍り付けるようで
泣いたって気持ちを伝えたって先輩の気持ちは変えられない
なら黙っていた方が楽だ
今までダイッキライだって言い続けてきたんだ
ダイッキライじゃないってわかってた
その真逆だって気づいてた
だけどもう今更気づいたって無意味だ
だから
だから......
先輩がこの部屋から出て行くのをただ待った
先輩がこの部屋から居なくなれば
私は思う存分に泣ける
だから今は......
そう自分に言い聞かせて唇を噛み締め
手で涙を拭う
――はずだったのに
その手は暖かい何かに包まれ
私の涙を私の手じゃないぬくもりが拭った