カシスオレンジみたいな恋
「ごめん、泣かすつもりじゃなかったんだけど......」
涙で揺れた私の視界に移り込むのは先輩
困った顔をした先輩の手が私の大粒の涙を拭ていた
「や、やだな…... 泣いてないですよ
目にゴミが入って…」
下手くそ過ぎる嘘で先輩の手を振り払おうとする自分のバカさを痛感する
「ごめんって。泣くなよ」
「だから泣いてませんって!!
だいたいなんで私が泣かなきゃいけないんですかっ!!」
悲しそうな目で見つめられて余計にボロボロと溢れでてくる涙
そんな素直な私とは裏腹に
ひねくれた私の強がりがまた口をすり抜ける
「ったく、どこまでも強がりだな」
「ちょっ!!」
呆れため息を零した先輩はそう言いながらなぜか私の手をグイッと引いて
その反動でポスッと先輩の胸の中に収まった私の体を優しく強く包み込んだ
ドクン、ドクンと高鳴る心臓
どうしてこんなことをするの?
そう思いながらも嬉しいと感じてしまう私
だけど
「ちょっと、離して」
やっぱり素直じゃなくて
私は先輩の胸板を強く押すけど
「無理」
その一言で返されて
私の後頭部を手のひらで覆うと無理やり私の頭を先輩の腕の中にうずめて
「好きな女に泣かれてほっとけるわけないだろ」