妖乱譚(ようらんたん)~幻魔神戦記~
七年前
白姫は九尾の后に人間の幼子を一時預けたいと言われた日には激怒した
『蛇の一族の中で跡目を産む位高き一族の長に、よりによって人間のこんな汚ならしい子供を育てろと言うのですか!?』
それを見ながら后は豪華な扇で口許を隠しながら小さく笑い、睨まれて縮こまる幼子をあやすように撫でた
『一時と言うたであろう。いざとなれば鴉天狗の夫婦が育てる。しかしこの女の子は迷惑を掛ける上にそんな重荷は背負わせたくないと言う。なんとも義理堅く筋の通った賢い子じゃ。しばし経てばそなたも気に入ろう』
九尾の后には世話になっているが、やはり人間を育てる事は理解出来ず、いずれ産まれる蛇の子の餌にしようとまで考えた
しかし痩せこけてはいるが汚れを落とし身なりを整えただけで見栄えがいい
興味本心で紅を指せばそれに負ける処か更に華やかになる
これはいいと思った白姫に更に気に入られる事になるのはその博識と飲み込みの早さ
先にも言った通り父親と共に鉱石の買い付けと商売にも行っていた紅緋はどの地でどんな妖が出ていたか、どの武家がどんな武器で戦うかを見ていたため自分の見た人間の国の情勢やその土地の鉱山で採れる鉱石等自分が見聞して知った事を妖達に教えた
護身に武術を学ばせれば武術の達人である鈍も認める腕前になり、妖術を学ばせれば応用まで月日を掛けずに覚え、妖に関する文献も文字を教えれば直ぐ理解し、玉や鉱石の加工は言うまでもない
しかしそれをひけらかそうとはせず、人間である事を重荷に感じ、恐れる存在である妖の長に毎日感謝を述べると、もしも邪魔だと思うなら殺しても構わぬと幼いながらに言った
そんな幼子をいたく、それはいたく気に入った白姫は返答を聞きに来た后に言った
『こんな気高くも美しく、初々しくも礼儀を重んじ、賢くも謙虚で稀有ないたいけない幼子を餌にするなんてもっての他、鴉天狗に預けるなんて勿体無くて出来る訳がないっ!』
『立派な意見じゃが、餌にしようとしたのは説教しようかの(怒)』
『改心したので結構ですっ(汗)』
人間を嫌い、餌にしようと考えた者とは思えぬ決断だった
更に紅緋には元々紅玉(こうぎょく)という名があったが、妖の世界で暮らす以上人間の名は捨てねばという后の考えで白姫が名付けを引き受けた
『お前は赤がよく似合うから紅の字を捨てるのは勿体無いね。これに別の赤を添えればもっと栄える赤になるよ。紅緋。これが妖の国での名前』
紅緋とは冴えた黄色味のある赤で緋色より赤味の強い色
女官の袴の色と言われている色の名を授かった彼女を、岩山の妖達は「天神が落とした子」として大事に育てた
「…七年前に餌にしなくて良かったぁ」
「餌になっても仕方ない身分で、こんなに甘やかされていいものか今でも信じられません」
「甘やかしてないわよ。だってあの究極の人間嫌いの銀呼が根負けしたら天地引っくり返る大騒動よ?そりゃ見方変わるって」
白姫はクスクス笑いながら紅緋を撫でる
「作りに行く序でに体綺麗にしてらっしゃい。今日辺りから蛟(みずち)の一族の子が産まれる予定だからあんたも手伝ってね」
「承知しました」
紅緋は一礼しまた洞窟の外に出た
「…七年って早いなぁ。あんな成長するんだね、人間って…」
白姫は感慨深く息を吐いた
白姫は九尾の后に人間の幼子を一時預けたいと言われた日には激怒した
『蛇の一族の中で跡目を産む位高き一族の長に、よりによって人間のこんな汚ならしい子供を育てろと言うのですか!?』
それを見ながら后は豪華な扇で口許を隠しながら小さく笑い、睨まれて縮こまる幼子をあやすように撫でた
『一時と言うたであろう。いざとなれば鴉天狗の夫婦が育てる。しかしこの女の子は迷惑を掛ける上にそんな重荷は背負わせたくないと言う。なんとも義理堅く筋の通った賢い子じゃ。しばし経てばそなたも気に入ろう』
九尾の后には世話になっているが、やはり人間を育てる事は理解出来ず、いずれ産まれる蛇の子の餌にしようとまで考えた
しかし痩せこけてはいるが汚れを落とし身なりを整えただけで見栄えがいい
興味本心で紅を指せばそれに負ける処か更に華やかになる
これはいいと思った白姫に更に気に入られる事になるのはその博識と飲み込みの早さ
先にも言った通り父親と共に鉱石の買い付けと商売にも行っていた紅緋はどの地でどんな妖が出ていたか、どの武家がどんな武器で戦うかを見ていたため自分の見た人間の国の情勢やその土地の鉱山で採れる鉱石等自分が見聞して知った事を妖達に教えた
護身に武術を学ばせれば武術の達人である鈍も認める腕前になり、妖術を学ばせれば応用まで月日を掛けずに覚え、妖に関する文献も文字を教えれば直ぐ理解し、玉や鉱石の加工は言うまでもない
しかしそれをひけらかそうとはせず、人間である事を重荷に感じ、恐れる存在である妖の長に毎日感謝を述べると、もしも邪魔だと思うなら殺しても構わぬと幼いながらに言った
そんな幼子をいたく、それはいたく気に入った白姫は返答を聞きに来た后に言った
『こんな気高くも美しく、初々しくも礼儀を重んじ、賢くも謙虚で稀有ないたいけない幼子を餌にするなんてもっての他、鴉天狗に預けるなんて勿体無くて出来る訳がないっ!』
『立派な意見じゃが、餌にしようとしたのは説教しようかの(怒)』
『改心したので結構ですっ(汗)』
人間を嫌い、餌にしようと考えた者とは思えぬ決断だった
更に紅緋には元々紅玉(こうぎょく)という名があったが、妖の世界で暮らす以上人間の名は捨てねばという后の考えで白姫が名付けを引き受けた
『お前は赤がよく似合うから紅の字を捨てるのは勿体無いね。これに別の赤を添えればもっと栄える赤になるよ。紅緋。これが妖の国での名前』
紅緋とは冴えた黄色味のある赤で緋色より赤味の強い色
女官の袴の色と言われている色の名を授かった彼女を、岩山の妖達は「天神が落とした子」として大事に育てた
「…七年前に餌にしなくて良かったぁ」
「餌になっても仕方ない身分で、こんなに甘やかされていいものか今でも信じられません」
「甘やかしてないわよ。だってあの究極の人間嫌いの銀呼が根負けしたら天地引っくり返る大騒動よ?そりゃ見方変わるって」
白姫はクスクス笑いながら紅緋を撫でる
「作りに行く序でに体綺麗にしてらっしゃい。今日辺りから蛟(みずち)の一族の子が産まれる予定だからあんたも手伝ってね」
「承知しました」
紅緋は一礼しまた洞窟の外に出た
「…七年って早いなぁ。あんな成長するんだね、人間って…」
白姫は感慨深く息を吐いた