妖乱譚(ようらんたん)~幻魔神戦記~
「うしっ!綺麗綺麗!」
稚児達と共に満悦の笑みを浮かべる白姫とは反対に艶やかな着物に身を包んみ美しい姫となった紅緋はぐったりしていた
「…重い…」
「あんたでかい熊を軽々抱えて岩肌登ってんのにそれで潰れる?慣れないと嫁に行けないぞ?」
「…暫く嫁に行かせないと言ったのは白姫でしょう…」
「いやー、あんたも十六だから花嫁修行くらいはさせようかなぁと。あ、そうだ」
稚児達に囲まれて着ていた物を脱がされた際に取った紅緋の髪結い紐に穴の空いた水晶を通して彼女の首に下げた
「まだ早いけど、あたしからも十六の祝い」
白姫は自分の首に下げた赤い石の付いた白い紐を揺らす
「こんな立派な…」
「これからは頼まれ事多くなって遠出する事が増えるし寂しいって言ってらんないから、あたしは紅玉、白い鉱石わかんなかったから水晶にしたけど、これで形だけでも側にいたくて…」
白姫は紅緋のためなら何でもした
人間を嫌い、紅緋を苛め傷付けた妖を自ら探して制裁した
自分の身は自分で守りたいと言えば鈍に武術を教えるよう頼んで稽古を付けてもらった
妖について知りたいと言えば人間嫌いの銀呼に頼み込んで書殿を行き来出来るようにして、読めない文字があれば細かく教えた
普段は気丈で明るい一族の長であると同時に寂しがりで慈悲深い育ての親の愛情が、紅緋はただただ嬉しかった
「ありがとうございます。
…母上」
その一言は、白姫への最大の感謝だった
「え…」
「では九尾の后殿への書状、確かに承りました。行って参ります」
一礼して紅緋は洞窟を後にした
「…はは、うえ…」
「主様!?」
突然泣き崩れた長に稚児達が慌てて側に寄る
「やっと、呼んでくれた。母上って…」
妖達の事や一族の体面のため、と幼い頃より白姫と呼ぶ事すら嫌がった紅緋が初めて自ら『母』と呼んでくれた
白姫は、涙ながらに言う
「不安だった…。体面を気にしてるって言って本当は母親らしい事なんか何にも出来てないあたしを母親として見てないんじゃないかって…」
「そんな…。姫様はそのような方では…」
「杞憂だってわかってる。あの子がそんな事思う子じゃないってわかってる。でも、やっぱり人間の親が恋しいんじゃないかって何度も思った」
紅緋を守って死んだ『本当の』父母
彼女が肌身離さず身に付けた髪結い紐は父母唯一の形見と聞いていた
だから白姫はただ傍らにいてくれるならそれでよかった
『母上』
それは白姫が紅緋に望んだ全てだった
稚児達と共に満悦の笑みを浮かべる白姫とは反対に艶やかな着物に身を包んみ美しい姫となった紅緋はぐったりしていた
「…重い…」
「あんたでかい熊を軽々抱えて岩肌登ってんのにそれで潰れる?慣れないと嫁に行けないぞ?」
「…暫く嫁に行かせないと言ったのは白姫でしょう…」
「いやー、あんたも十六だから花嫁修行くらいはさせようかなぁと。あ、そうだ」
稚児達に囲まれて着ていた物を脱がされた際に取った紅緋の髪結い紐に穴の空いた水晶を通して彼女の首に下げた
「まだ早いけど、あたしからも十六の祝い」
白姫は自分の首に下げた赤い石の付いた白い紐を揺らす
「こんな立派な…」
「これからは頼まれ事多くなって遠出する事が増えるし寂しいって言ってらんないから、あたしは紅玉、白い鉱石わかんなかったから水晶にしたけど、これで形だけでも側にいたくて…」
白姫は紅緋のためなら何でもした
人間を嫌い、紅緋を苛め傷付けた妖を自ら探して制裁した
自分の身は自分で守りたいと言えば鈍に武術を教えるよう頼んで稽古を付けてもらった
妖について知りたいと言えば人間嫌いの銀呼に頼み込んで書殿を行き来出来るようにして、読めない文字があれば細かく教えた
普段は気丈で明るい一族の長であると同時に寂しがりで慈悲深い育ての親の愛情が、紅緋はただただ嬉しかった
「ありがとうございます。
…母上」
その一言は、白姫への最大の感謝だった
「え…」
「では九尾の后殿への書状、確かに承りました。行って参ります」
一礼して紅緋は洞窟を後にした
「…はは、うえ…」
「主様!?」
突然泣き崩れた長に稚児達が慌てて側に寄る
「やっと、呼んでくれた。母上って…」
妖達の事や一族の体面のため、と幼い頃より白姫と呼ぶ事すら嫌がった紅緋が初めて自ら『母』と呼んでくれた
白姫は、涙ながらに言う
「不安だった…。体面を気にしてるって言って本当は母親らしい事なんか何にも出来てないあたしを母親として見てないんじゃないかって…」
「そんな…。姫様はそのような方では…」
「杞憂だってわかってる。あの子がそんな事思う子じゃないってわかってる。でも、やっぱり人間の親が恋しいんじゃないかって何度も思った」
紅緋を守って死んだ『本当の』父母
彼女が肌身離さず身に付けた髪結い紐は父母唯一の形見と聞いていた
だから白姫はただ傍らにいてくれるならそれでよかった
『母上』
それは白姫が紅緋に望んだ全てだった