妖乱譚(ようらんたん)~幻魔神戦記~
聴司に出会ったのは蛇の女の一族に来て間もない頃(白姫に気に入られた直後)
稚児達に木の実を取りに行くよう頼まれたので取りに行ったはいいが、霧が深い場所で帰り道がわからなくなっていた
『帰り道、わからないんだ?』
そんな時、目の前に現れたのが聴司だった
『誰?って思った?』
『!』
『人間だよね?』
『…そう、だ…』
『蛇の女の稚児に頼まれて、採ったらいけない木の実取りに行かされたんだ?』
『!?』
目を見開く子供に、憐れみの目を向けた
『可哀想、誰も君を信じちゃいない。人間を信じる妖はいないよ?君を助けた妖だって、腹の底では人間を憎んでる。独りぼっちの馬鹿な人間をね?』
『…きでん、は…』
幼い女の子に、そしてそんな幼子に八つ当たりのように言葉を浴びせる自分に、聴司は嘲笑した
『…僕は覚。心を読む、バケモノだよ…』
聴司は傷付く顔が見たかった
人間はそういう生き物だと信じて疑わなかったからだ
彼女の言葉を聞くまでは
『かんぜんなひとがたのあやかし、はじめて見たっ!』
幼い女の子はきらきらとした目で聴司を見ながらはっきり言った
恐怖に好奇心が勝ってしまったからだ
『…あれ…?』
『にびどのやわたしのあるじやきさきどのはどこかしらあやかしのぶぶんをのこしてるし、ふだんから人のすがたなのですか?』
『いや、厳密には違うんだけど、まぁ見てくれはね…。一族皆こうだよ?』
『心がよめるのはようじゅつのたぐいではなくあやかしとしての生まれもつ力なのですか?』
『あ、うん。そういう妖だから』
『あと、さきほどとってはいけないきのみと言われたが、わたしはきのみの名とばしょしかきかされてないのです』
『人間だからわからないのも無理ないけど、妖で知らない奴はいないよ。国でも二ヶ所に二本ずつしかない木で大きな祭事以外ではもいだら駄目なんだよ』
質問攻めしてほぉー、と納得する少女の心は『稚児達に騙された悲しみ』は一切なく『心が読める妖への好奇心』が大半を占めていた
『…僕妖だよ?怖くない?』
『心が読めるならそのといはぐもんでしょう?』
言い返されて押し黙る
そしてそんな少女に心惹かれる自分がいて驚いた
『…なにか?』
『君、名前は?』
少女は誇らしげに笑って答えた
『べにひ。べに色にひ色も合わさる赤色の名前をおさどのからいただきました』
そんな光のような笑顔を向ける少女に、聴司は完全に心を奪われた
『わ、っ…』
『紅緋、紅、緋、べーにーひ♪』
呑気に笑いながら抱き付き、自分の名前を口ずさむ聴司に呆気に取られた紅緋
『あ、あの…?』
『僕は聴司。それでね…』
嬉しそうに笑いながら言う
『…これは『緋色さん』と二人だけの秘密ね?』
『…『ひいろさん』?』
『うん、僕紅緋より緋色が好きだからそう呼びたいの。駄目?』
『…べつにかまいませぬが…』
『直に慣れるよ』
『よまれた!?』
『緋色さん分かりやすいもん(笑)』
それから七年
聴司はすっかり人間に興味を持ち、紅緋に甘くなっていた
稚児達に木の実を取りに行くよう頼まれたので取りに行ったはいいが、霧が深い場所で帰り道がわからなくなっていた
『帰り道、わからないんだ?』
そんな時、目の前に現れたのが聴司だった
『誰?って思った?』
『!』
『人間だよね?』
『…そう、だ…』
『蛇の女の稚児に頼まれて、採ったらいけない木の実取りに行かされたんだ?』
『!?』
目を見開く子供に、憐れみの目を向けた
『可哀想、誰も君を信じちゃいない。人間を信じる妖はいないよ?君を助けた妖だって、腹の底では人間を憎んでる。独りぼっちの馬鹿な人間をね?』
『…きでん、は…』
幼い女の子に、そしてそんな幼子に八つ当たりのように言葉を浴びせる自分に、聴司は嘲笑した
『…僕は覚。心を読む、バケモノだよ…』
聴司は傷付く顔が見たかった
人間はそういう生き物だと信じて疑わなかったからだ
彼女の言葉を聞くまでは
『かんぜんなひとがたのあやかし、はじめて見たっ!』
幼い女の子はきらきらとした目で聴司を見ながらはっきり言った
恐怖に好奇心が勝ってしまったからだ
『…あれ…?』
『にびどのやわたしのあるじやきさきどのはどこかしらあやかしのぶぶんをのこしてるし、ふだんから人のすがたなのですか?』
『いや、厳密には違うんだけど、まぁ見てくれはね…。一族皆こうだよ?』
『心がよめるのはようじゅつのたぐいではなくあやかしとしての生まれもつ力なのですか?』
『あ、うん。そういう妖だから』
『あと、さきほどとってはいけないきのみと言われたが、わたしはきのみの名とばしょしかきかされてないのです』
『人間だからわからないのも無理ないけど、妖で知らない奴はいないよ。国でも二ヶ所に二本ずつしかない木で大きな祭事以外ではもいだら駄目なんだよ』
質問攻めしてほぉー、と納得する少女の心は『稚児達に騙された悲しみ』は一切なく『心が読める妖への好奇心』が大半を占めていた
『…僕妖だよ?怖くない?』
『心が読めるならそのといはぐもんでしょう?』
言い返されて押し黙る
そしてそんな少女に心惹かれる自分がいて驚いた
『…なにか?』
『君、名前は?』
少女は誇らしげに笑って答えた
『べにひ。べに色にひ色も合わさる赤色の名前をおさどのからいただきました』
そんな光のような笑顔を向ける少女に、聴司は完全に心を奪われた
『わ、っ…』
『紅緋、紅、緋、べーにーひ♪』
呑気に笑いながら抱き付き、自分の名前を口ずさむ聴司に呆気に取られた紅緋
『あ、あの…?』
『僕は聴司。それでね…』
嬉しそうに笑いながら言う
『…これは『緋色さん』と二人だけの秘密ね?』
『…『ひいろさん』?』
『うん、僕紅緋より緋色が好きだからそう呼びたいの。駄目?』
『…べつにかまいませぬが…』
『直に慣れるよ』
『よまれた!?』
『緋色さん分かりやすいもん(笑)』
それから七年
聴司はすっかり人間に興味を持ち、紅緋に甘くなっていた