妖乱譚(ようらんたん)~幻魔神戦記~
一方外では







「・・・・・」







銀呼が苦虫を噛んだような表情で中の会話を聞いていた








「…喋りたいなら護衛受け入れれば?」

「人間といたくない」

「だから何百歳が我が儘言うなよ」









銀呼の人間嫌いは筋金入り



人間の国への偵察は愚か、人間との遭遇率が高い妖の森へ行く事も嫌がる







だから七年前、紅緋が書殿に来た時は大騒ぎだった









『断るっ!人間ごときが崇高な書を読むなんぞ許されると思っているのかっ!』

『だ・か・らっ!監視付けるし借りずに紙に写すだけだからそれくらい許しなさいよ石頭っ!』

『書殿を汚す気かっ!』

『あたしの子供に勉強くらいさせろっ!』











紅緋に妖の事や歴史を学びたいと言われた白姫


しかし元々読み書きの出来た紅緋は岩山にある書物は難しい妖文字(あやかしもじ)で書かれた物以外は難なく読み込んだ



そこで、紅緋が行ける距離の書殿で勉強させようと談判に来ていたのだが、最早喧嘩になっていた








『大体長として恥ずかしくないのか!?人間ごときに心奪われるとはっ!』

『恥ずかしくありませんーっ!紅緋は美人で優しくて気立てが良くて、博識だし物覚えいいし、武術勉強中だけど筋いいし、何より狐の后殿から頼まれたんだものっ!』








そして当の紅緋は…












『…まことにもうしわけありません』










書殿にいる妖達に謝り倒していた










『こちらこそ申し訳ありません。銀呼様の人間嫌いは今に始まった事ではないのですが…』








紅緋に優しく言うのは長い黒髪に整った容姿、全身を巻物であしらった女


文車妖妃と呼ばれる書の妖、あやのだった










『わたしのわがままでおきたそうどうです。ほんとうにごめんなさい』

『聞きましたよ。妖の事を知りたくて白姫に頼んだのでしょう?嬉しいですわ。理解者が増えるのは』









あやのは人間嫌いの銀呼とは反対に人間に敵意はない



書を目当てに度々人間の国へ行って書を買い漁ったり人間のふりをして書を写したりしに行く度に、人間は『悪』ばかりではない事を理解しているからだ









『…ふぐるまようびどのは…』

『あやのとお呼び下さい。紅姫様』

『べにひ、と…。ひめとよばれるみぶんではありません』

『畏まりました、紅緋様』

『…あやのどののからだのしょはよめるのですか?』

『勿論。私は書の妖、九十九神の仲間ですから、私自身がこの書と言っても過言ではありません』

『つくも?かみさま?』










好奇心に目を光らせる幼子に、あやのは白姫が心奪われるのも仕方がないと思った









『字は読めますか?』

『ひらがなと、あるていどのかん字と、あるじからおそわったかんたんなあやかし文字なら』

『では説明しながら勉強いたしましょうか』

『はいっ!』
























『あやのっ!何をしているっ!』












気付いた銀呼が鬼の形相(本当に鬼なのだが)で向かってきた
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