妖乱譚(ようらんたん)~幻魔神戦記~
「…今思い出しても腹立たしい…っ!」
「監視お前にやらせて血だらけにするわ命に関わる凍傷させるわで白姫に半殺しにされた事もあったなぁ」
「…それでも奴は来た」
傷付けても、傷付いても、紅緋は呻き声一つ上げなかった
それどころか半死半生の銀呼を庇い、手当てや看病もした
『また、指南して下さい』
どれだけ酷い扱いをしても、侮蔑しても紅緋は笑ってそう言った
「…屑共とは違うと言っておこう」
銀呼は心の中では紅緋を認めている
しかし素直になれず、すぐに突っぱねてしまうのだ
「…話は変わるが…」
昔を懐かしんだ沁々とした表情から一変、真剣なものへと変わる
銀呼も小さく息を吐く
「…言っておくが、俺ではないぞ」
「疑ってねぇよ。…あれは鵺の一派だ」
最悪の妖、鵺
その悪行は、同じ妖でさえ忌む者が多い
その鵺が悪事を働く際に動くのがその一派である
「…一派とはいえ普通の妖程度ならお前だけで充分過ぎる。それを俺と聴司にも頼むくらいだ。あの長まで絡んでくると厄介だぞ」
「長だけ絡んでくれればまだすっきりするがな」
鈍は息を吐く
「…こはく、と呼ばれた幼子がいた。紅緋が命懸けで守ろうとした男の子は、人間を恨んでいる」
鈍の脳裏に浮かぶ幼い男の子
人間を恨みながら紅緋を姉と慕った子供
幼いが故の残忍さ、姉のためなら他人の命を差し出す冷徹さを見せた
それは、銀呼が忌み嫌う人間の業
妖すら疎う暗黒の性
「…確かにあれは獣だ。人間が持ち得る業と性を、あの幼さで身に付けていたんだからな」
「…あの女も屑に魅いられるとは、呆れを越して同情したくなるな」
その優しさは、光
闇をも呼ぶ、悲しい性
心に闇を抱えていてもその光だけは失わない、それが紅緋の強さだった
「…嫌な風だ」
二人の間を抜ける温い風
「…杞憂で済めばいいがな」
鈍は、心の底からそう思った
「監視お前にやらせて血だらけにするわ命に関わる凍傷させるわで白姫に半殺しにされた事もあったなぁ」
「…それでも奴は来た」
傷付けても、傷付いても、紅緋は呻き声一つ上げなかった
それどころか半死半生の銀呼を庇い、手当てや看病もした
『また、指南して下さい』
どれだけ酷い扱いをしても、侮蔑しても紅緋は笑ってそう言った
「…屑共とは違うと言っておこう」
銀呼は心の中では紅緋を認めている
しかし素直になれず、すぐに突っぱねてしまうのだ
「…話は変わるが…」
昔を懐かしんだ沁々とした表情から一変、真剣なものへと変わる
銀呼も小さく息を吐く
「…言っておくが、俺ではないぞ」
「疑ってねぇよ。…あれは鵺の一派だ」
最悪の妖、鵺
その悪行は、同じ妖でさえ忌む者が多い
その鵺が悪事を働く際に動くのがその一派である
「…一派とはいえ普通の妖程度ならお前だけで充分過ぎる。それを俺と聴司にも頼むくらいだ。あの長まで絡んでくると厄介だぞ」
「長だけ絡んでくれればまだすっきりするがな」
鈍は息を吐く
「…こはく、と呼ばれた幼子がいた。紅緋が命懸けで守ろうとした男の子は、人間を恨んでいる」
鈍の脳裏に浮かぶ幼い男の子
人間を恨みながら紅緋を姉と慕った子供
幼いが故の残忍さ、姉のためなら他人の命を差し出す冷徹さを見せた
それは、銀呼が忌み嫌う人間の業
妖すら疎う暗黒の性
「…確かにあれは獣だ。人間が持ち得る業と性を、あの幼さで身に付けていたんだからな」
「…あの女も屑に魅いられるとは、呆れを越して同情したくなるな」
その優しさは、光
闇をも呼ぶ、悲しい性
心に闇を抱えていてもその光だけは失わない、それが紅緋の強さだった
「…嫌な風だ」
二人の間を抜ける温い風
「…杞憂で済めばいいがな」
鈍は、心の底からそう思った