妖乱譚(ようらんたん)~幻魔神戦記~
「…れんげ、ともうします。あかのひめ…」
たどたどしい口調の女の子は、膝を着いて頭を垂れた
「すまんのう。普段は利口で優しいが、喋りもおぼつかず普段から人馴れが出来んでな。里の外にも行きたがらない」
「は、はぁ…」
突然現れた幼子に絶句する四人
すると蓮華は真っ直ぐ紅緋の横へと向かい、傍らに座る
「…姫、様?」
「…やっと、会えた…」
袖を握った彼女は紅緋の目を見た
「…あかのひめ、すくわれた、赤子、おぼえて、る?」
小さく紡がれた言葉に、紅緋は再び絶句した
後ろにいた聴司もどちらかの心を読んだのか表情を変えた
銀呼がそれに気付き聴司に小さく問う
「…あの姫君は…」
「…人間、だよ」
聴司の答えに銀呼と鈍は目を見開く
「…あの姫は、こはくと呼ばれた男の子と共に紅緋が助けた赤子だと…」
こはくに紅緋の命の対価として投げられた小さな命
聴司の言葉に鈍は納得がいった
この七年、幾ら調べても誰に聞いても明らかにならなかった赤子の所在
よもや狐の聖地に居ようとは誰も考えまい
「…紅緋。頼みじゃが、蓮華の遊び相手になっておくれ。お前となら娘も喜ぼうし、外にも関心を持ってくれよう」
皆の心の内を悟った后の言葉に紅緋ははっとして、困ったように自分を見つめる幼い姫君に精一杯笑ってやる
「…姫様、御殿を案内して下さいますか?」
優しく笑って聞く憧れの人間に、蓮華は花が咲いたように微笑んだ
「なら、僕は緋色さんに付くよ」
聴司の申し出に紅緋は困惑するが耳元で囁かれる
「鈍も后殿に聞きたいことあるみたいだし、なによりこのままだと銀呼の大爆発は必至だから」
目だけで銀呼を見てやれば、顔を伏せているがその手は畳を貫くのではないかと思う程爪を立てていた
「姫君、狐や外の鬼以外の妖に会った事あるかい?」
首を横に振る蓮華に聴司は笑う
「なら実際見るのがいいよ。緋色さんもそうして学んで妖に詳しくなったんだよ」
聴司が読んだ蓮華の心は、人間だが沢山の妖に愛されて生きている紅緋への強い憧れと尊敬
聴司の言葉でそれを察した紅緋はそれを利用する
「ええ。御殿を周ったら外にいる輪入道殿に会いに行きませんか?そこから外への興味を持って戴きたいのです」
憧れの姫に誘われ、はにかみながら頷く少女が紅緋は愛おしい
「…では、案内お願い致します」
紅緋が手を差し出すと、おずおずと握る小さな手
握り返せば、また嬉しそうに笑う
「…いすず、も、手…」
小さな手が侍女の手を握る
「…では、私もお供させて頂きます」
顔を覆う黒い布で表情は読めないが、依鈴の纏う空気は温かく、優しい
「じゃあ行きますか」
「…聴司殿、私の手を握らなくとも」
「余ったから(笑)」
手を繋いだ四人は謁見の間を後にした
たどたどしい口調の女の子は、膝を着いて頭を垂れた
「すまんのう。普段は利口で優しいが、喋りもおぼつかず普段から人馴れが出来んでな。里の外にも行きたがらない」
「は、はぁ…」
突然現れた幼子に絶句する四人
すると蓮華は真っ直ぐ紅緋の横へと向かい、傍らに座る
「…姫、様?」
「…やっと、会えた…」
袖を握った彼女は紅緋の目を見た
「…あかのひめ、すくわれた、赤子、おぼえて、る?」
小さく紡がれた言葉に、紅緋は再び絶句した
後ろにいた聴司もどちらかの心を読んだのか表情を変えた
銀呼がそれに気付き聴司に小さく問う
「…あの姫君は…」
「…人間、だよ」
聴司の答えに銀呼と鈍は目を見開く
「…あの姫は、こはくと呼ばれた男の子と共に紅緋が助けた赤子だと…」
こはくに紅緋の命の対価として投げられた小さな命
聴司の言葉に鈍は納得がいった
この七年、幾ら調べても誰に聞いても明らかにならなかった赤子の所在
よもや狐の聖地に居ようとは誰も考えまい
「…紅緋。頼みじゃが、蓮華の遊び相手になっておくれ。お前となら娘も喜ぼうし、外にも関心を持ってくれよう」
皆の心の内を悟った后の言葉に紅緋ははっとして、困ったように自分を見つめる幼い姫君に精一杯笑ってやる
「…姫様、御殿を案内して下さいますか?」
優しく笑って聞く憧れの人間に、蓮華は花が咲いたように微笑んだ
「なら、僕は緋色さんに付くよ」
聴司の申し出に紅緋は困惑するが耳元で囁かれる
「鈍も后殿に聞きたいことあるみたいだし、なによりこのままだと銀呼の大爆発は必至だから」
目だけで銀呼を見てやれば、顔を伏せているがその手は畳を貫くのではないかと思う程爪を立てていた
「姫君、狐や外の鬼以外の妖に会った事あるかい?」
首を横に振る蓮華に聴司は笑う
「なら実際見るのがいいよ。緋色さんもそうして学んで妖に詳しくなったんだよ」
聴司が読んだ蓮華の心は、人間だが沢山の妖に愛されて生きている紅緋への強い憧れと尊敬
聴司の言葉でそれを察した紅緋はそれを利用する
「ええ。御殿を周ったら外にいる輪入道殿に会いに行きませんか?そこから外への興味を持って戴きたいのです」
憧れの姫に誘われ、はにかみながら頷く少女が紅緋は愛おしい
「…では、案内お願い致します」
紅緋が手を差し出すと、おずおずと握る小さな手
握り返せば、また嬉しそうに笑う
「…いすず、も、手…」
小さな手が侍女の手を握る
「…では、私もお供させて頂きます」
顔を覆う黒い布で表情は読めないが、依鈴の纏う空気は温かく、優しい
「じゃあ行きますか」
「…聴司殿、私の手を握らなくとも」
「余ったから(笑)」
手を繋いだ四人は謁見の間を後にした