ブンちゃんとぱらぱら小道
「アメさんはお友達とおしゃべりをしに行っています」
「へえ、そっかそっか」
おねえさんはにこにこして応えた。
「お花屋さんのおねえさん、ご機嫌ですね。何か素敵なことでもあったのですか?」
ブンちゃんまで嬉しくなるにこにこ顔のおねえさんを見上げながら、ブンちゃんはわくわくして聞いた。
「えへへ。あのね、お手紙が来たの。前に、私が作った花束を買ってくれたひとから。大事なひとの誕生日にその花束を贈ってくれたんですって。そしたらとっても喜ばれたって、ありがとうって」
「わあ、とっても素敵ですね」
ブンちゃんは感嘆の声を上げた。
「ありがと」
おねえさんは手に持ったままの一本のガーベラをくるくると弄びながらにっこりした。
「この仕事やっててよかったなあ、って思ったよ」
お花屋さんのお姉さんは赤いガーベラに鼻先を付けて、キスをした。
「おねえさんは、お仕事が好きですか?」
ブンちゃんは目をくりくりさせて聞いた。
おねえさんはガーベラから顔を離してブンちゃんを見る。
「うん。でも親の代からのお店だから、最初は嫌だったよ。自分で選んだ仕事じゃないからさ」
緑色のエプロンのポケットからハサミを出して、おねえさんは手に持っていたガーベラの茎を短く切り落とした。ぱちん、と音がした。
「サラリーのためのお仕事ですか?」
ブンちゃんの言葉におねえさんはきょとん、として、それから「あっはは!」と快活に笑った。