ブンちゃんとぱらぱら小道
スドーさん
ブンちゃんの朝は早い。
まだ陽が昇ってから一時間と経っていないのに、テーブルの上にはすでにほうほうと湯気を立てたモーニングコーヒーが置いてある。
「早寝早起きは淑女のたしなみです」
鼻からコーヒーの香りを吸い込み、恍惚の表情を浮かべるブンちゃん。
ブンちゃんのコーヒーはスプーン二杯のお砂糖だけ。ミルクはひとつ前の誕生日で卒業したのだ。
少しずつ大人になる自分に、ブンちゃんは満足そうだった。
隣の家と家の隙間から漏れる朝日が大きな窓からちらちらとブンちゃんに降り注ぐ。
「お天気のようですね」
コーヒーカップをソーサーにかちゃりと置いて嬉しそうにブンちゃんが言った。
「今日もお散歩にゆきましょう」
ブンちゃんの日課はお散歩。毎日欠かさずお散歩に行く。
ブンちゃんは椅子から立ち上がって寝室へ入った。
ベッドの枕元に置いてあるバスケットには赤いチェックのタオルケットが敷かれ、その上でグレーの縞模様の猫が眠たそうに欠伸をした。
「アメさん、おはよう」
縞猫のアメさんに朝の挨拶をしてから、ブンちゃんはクローゼットを開けた。
クローゼットにずらりと掛けられたワンピースを前に、ブンちゃんは難しい顔をして腕を組む。
「むむ、今日は何を着ましょうか」