ブンちゃんとぱらぱら小道
果物屋さん
てくてく。てくてく。
歩いていくと、少し離れた所から「ブンちゃーん」と呼ぶ声がした。
ブンちゃんが顔を上げてみると、向こうの通りに果物屋さんが見えた。お兄さんがブンちゃんに向かって大きく手を振っている。
「おはようございます、果物屋さんのお兄さん」
ブンちゃんが通りを渡って挨拶すると、果物屋さんのお兄さんはにっこり笑って女の子みたいな声で「おはよう、ブンちゃん」と言った。
「かわいいワンピースだね、お空さんとおそろいだ」
「ありがとうございます」
ブンちゃんは嬉しくなってにっこりした。
「今日は何か買っていくかい? 今の時期だとグレープフルーツがお薦めだよ」
果物屋さんのお兄さんはそう言って、ぷっくりつやつやしたグレープフルーツを手に取った。
「わあ、とってもきれい。ひとつください」
「まいど。そのままでもいいけど、お砂糖やはちみつなんかをかけて食べてもおいしいよ」
果物屋さんのお兄さんは女の子みたいな白い手でグレープフルーツを紙袋に入れてくれた。
「今日のおやつにします」
きっちりお金を払ってから手提げのカゴに紙袋を入れる。グレープフルーツの爽やかな香りがふわりと漂った。