ブンちゃんとぱらぱら小道
「かわいいお魚が入ってるね、アメさんのごはんかい?」
果物屋さんのお兄さんは真っ赤なかわいいエプロンのポッケに手を入れた。
「はい、たくさん食べなさいってお魚屋さんがくださったんです」
「ブンちゃんおなか空いてるの?」
真っ赤なエプロンのポッケに手を入れたまま果物屋さんのお兄さんがブンちゃんに聞く。
「いいえ。たくさん考えるために食べるんです」
「? 何を?」
お兄さんは首を傾げた。
「サラリーと守りたいひととの関係性についてです」
果物屋さんのお兄さんはこてん、と逆方向に首を傾げた。
「どういうこと?」
女の子みたいな声で聞く。
「スドーさんは、守りたいひとのために好きではないお仕事をしています。でもお魚屋さんは、好きなお仕事をしています。お魚屋さんは、お仕事だからいろんなことがあると言いました。好きなことだけをしているわけじゃないと言いました」
ブンちゃんは目の前に並べられているぴかぴかのリンゴを見つめながら一息で言った。
「お魚屋さんは、自分で折り合いをつける問題だと言いました」
最後にそう付け加えてブンちゃんは口を閉じた。言えば言うほど、頭がこんがらがっていくような感じがした。