ダイス
「浅川さん、神沢さんっ」
コーヒーを買いにいっていたはずの蓮が慌てた様子で部屋に飛び込んできた。
しかし手にはきちんとコーヒーショップの袋が持たれている。
「どうしたの?」
髪を乱している蓮の姿を見て、袋の中のコーヒーの悲惨さを想像した。
ああ、アイスカフェモカなんて頼まなければよかった。
紗江子は蓮の様子を気にしながらも、カフェモカの様子も気にした。
「今回の被害者は、四人ともつけられていたという話はないそうです」
蓮は乱れた前髪を手で直しながら言った。
「それって……」
唯一の過去の犯行との相違点。
いや、過去の被害者も全員がつけられていたと言っていたわけではない。
十人中六人。
でもこの割合を考えれば、四人中一人くらいはつけられていることを誰かに言っていてもいい。
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