ダイス



「それを聞いたとして、どうするんだよ」


深水は煙草の空き箱を手の中で弄びながら訊いた。


人に言うほどの話ではない。


「どうも、しないですけど、ちょっと疑問に思ったので」


紘奈は視線を煙草の箱に向けた。


「別に、いいだろ」


深水は箱をくしゃりと潰しながら返した。


自業自得だし、本当に他人に話すことではない。


「じゃあ、もう一つの疑問です」


紘奈はふう、と息を吐いてから口を開いた。


自分になんて微塵も興味ないはずなのに何故そんなことを訊いてくるのか。


女というのは本当に分からない生き物だ。


「何?」


深水は目の前で立っている紘奈を見上げた。




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