ダイス



アルバイトが終わる時間には母親がいつも迎えに来てくれた。


すると足音は聞こえなかった。


それだけで夜眠ることが出来た。


でも手紙は届いた。


誠と別れろ、とまで書いてあった。


さして好きではない相手。


でも別れるということは考えられなかった。


そして、ストーカーのことは誠には伝えていなかった。


誠に頼ろうとは思わなかったから。


だから誠はあの事件が起きるまで、紗江子がストーカー被害に遭っていたことを知らなかったのだ。


そして、親友の真由子も。


真由子に言えば誠に伝わってしまうと思ったからだ。


恋人の親友。親友の恋人。


そういった関係からか、二人はそれなりに仲が良かった。


ストーカーは更にエスカレートし、手紙の量が増えた。


愛してるのに何故こっちを向かない。


毎日そう書かれていた。


でも、恐怖よりもそれに慣れていく自分がいた。



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