ダイス
「今晩は」
癖のある声に紗江子は振り向いた。
そこには明良の姿があった。
「ああ、今晩は」
紗江子は笑みを浮かべながら返す。
殺伐としていた気持ちが沈静していくのを感じる。
これは、恋愛感情なのだろうか。
紗江子はふと思った疑問を自分に投げ掛けた。
しかし、そんな簡単にそんな感情を抱くものだろうか。
でも、とも思う。
こうして偶然が重なることで、心の何処かで運命を感じているのかもしれない。
だが結局答えは出ないのだ。
.