ダイス


「奥様、お元気ですか?」


突然の声に深水は口から煙草を外した。


そこには喫煙室だというのに紗江子がいる。


彼女は煙草を吸わない。


「……会ったこと、あったけ」


深水が言うと、紗江子は目を閉じて首を横に振った。


「どんな方かも知りません」


紗江子は目を開けた後、そう言った。


それもそうだろう、話したこともない。


「三年前のこと、覚えてるか?」


深水は煙草を灰皿に放り込みながら訊いた。


それに対して紗江子は無言で頷く。



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