ダイス
過去を清算する術なんて何処にもない。
血の臭い。
紗江子ははっとして隣に並ぶ明良を見た。
耳の横を刈り上げたようなヘアスタイルは細面の彼によく似合っている。
綺麗な形の耳に、すらりとした項(うなじ)。
「どうかした?」
自分の横顔に視線を向けられたことに気付いたのか、明良は笑顔を向けてきた。
「ううん、何でもない」
紗江子は軽く笑みを浮かべて返した。
気のせいだ。
今日、深水から過去の話を聞き、三年前のあの現場を思い出したから、あの臭いまで思い出したのだ。
あの血腥さまで一緒に。
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