ダイス



床に広がった血の色は紗江子が知っているそれとは違っていた。


臭いも、何もかも。


そこにあったのは、無惨と呼べる光景そのもの。


悲惨さを語り、息絶えた被害者の背中。


死体を見るのは初めてではなかった。


それでも足がすくむのを感じた。


「仕事、大変なの?」


軽く意識を飛ばしていた紗江子に明良が語りかけた。


「あ、ううん」


確かに仕事は大変だが、本当の職業を言っていない以上、それを言うわけにはいかない。


そもそも、刑事だと明かしたところで捜査内容を話すわけにはいかないのだ。



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