ダイス




「うん、何?」


明良は少しだけ首を傾げた。


「人を、他人を殺すことに意味ってあるのかしら?」


こんな話に一般論も何もない。


ただ、隣にいる相手がどう答えるのか知りたいだけなのかもしれない。


「また物騒な質問だね」


明良は目を細めて言った。


「……ちょっとね」


紗江子は前を向いたまま、返した。


夜の街は人が多く、小さく返した言葉など簡単に渦に呑み込まれてしまう。


「理由がなかったら、殺さないんじゃないかな」


明良は悩みもせずに答えた。



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