ダイス
「人が人を殺すのには、何かしら理由があるんだ。それが知人でも他人でも。通り魔だって、殺したい、とか、死刑になりたかったとか、何でもあるんだよ。だから、理由のない殺人なんて、何処にも存在しないんじゃない?」
そう語る明良の口調は淡々としていて腹の底に響いた。
ずん、と重みがあり、何故かそれは絵空事や空想を語っているのではないと思わせた。
現実味があると感じるのは、職業柄何人もの殺人犯をこの目に映してきたからか。
「……誰か、殺したことがあるような口振りね」
紗江子は人混みに掻き消されぬように確りと声を出した。
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