ダイス
「殺したこと、あるよ、て答えたら君はどう思うの?」
目の前に座る男は静かな声で言った。
唇にはまだ彼の唇が触れた感触が残っている。
軽く触れるようなキスをした後、明良は小さく微笑んで、移動しようか、と囁いた。
周りの人達はいい年をした大人がこんな道端で何をしているのだ、という視線を寄越していた。
それでも、この世界には二人だけしかいないような感覚が続いていた。
呆けたような頭で考えた移動先はカフェだった。
セルフサービスの店の、端の席を選んだ。
夜遅いというのに店内に客はそれなりにいた。
だがガラス張りを売りとしている店の為か、端の、窓から離れた席の周りに他の客はいない。
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