ダイス



何気無く知り合った人間だと思っていた。


何気無く偶然が重なると思っていた。


でも、違った。


刑事がそんなことにも気付けないだなんて。


紗江子は自嘲を浮かべてから、また頭を動かした。


このことを深水達に伝えるべきか。


いや、伝えないわけにはいかないだろう。


でもそうしたら明良は逮捕されてしまうのか。


こんなことを考えても仕方無い。


殺人を犯した人間は必ず裁かれるべきなのだから。


溜め息が止まらずに洩れる。


今すぐ電話をするか、それとも考えを纏めてから伝えるか。


次々に考えなくてはならないことが浮かぶ。


「浅川さん?」


可愛らしい声に紗江子は顔を上げた。



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