ダイス
「神沢……」
そこにはトレーを手にした紘奈がいた。
「何かありました?」
紘奈はそう言った後、いいですか、と紗江子の目の前を指差した。
紗江子はええ、と頷き、明良の飲んだ後のグラスを自分の方に移動させた。
「デートでしたか?」
紘奈は冗談ぽく笑いながら、椅子に腰を下ろした。
「ううん、違うわ」
軽く笑いながら返すと、紘奈はそうですか、と言った。
「何か、調べてたの?」
本庁を出たのは二時間も前。
普通ならとっくに自宅に着いている時間だ。
.