ダイス



「お帰りなさい」


珍しく、扉の開く音を聞き付けて雪音が玄関まで姿を現した。


「……ただいま」


深水は雪音にそう言い、彼女の横をすり抜けるようにして部屋に入った。


「新井君から、連絡があったの」


深水の背中に雪音が消え入りそうな声を掛けた。


深水は足を止めて、勢いよく振り返る。


「いつ?」


「今日の、お昼頃」


雪音は視線を床に落として答えた。


今更新井を逮捕したいなどと思っているのだろうか。


だから、彼からの連絡を気にするのか。


それとも新井が戻ってきたら、目の前にいるこの娘を取り戻されると思っているのか。


深水はそこまで考えても漸く自分の気持ちに気が付いた。


そうなのだ。



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