ダイス



三つの所轄、そして捜査一課。


これだけの合同捜査本部ともなると人数はかなりいる。


否、かなりなんてものではない。


これだけの規模の捜査本部を経験するのは紗江子にとっては初めてだった。


勿論、知らない顔ばかり。


「《ダイス殺人事件》、だそうです」


長谷部は耳打ちするようにその名を教えてくれた。


「ちょっと待って、それって……」


紗江子は思わず大きくなりそうになった声をある人影を見て細めた。


長身のその身体は一見すらりとしているが、スーツの下は程よく筋肉がついているのだろう。


顔は優男風だが、奥二重の瞳は何処か鋭い。


無表情に思える顔立ちはそれでいて少しの甘さがある。


でもその性格の何処にも甘さなどない。


だがそう思っているのは自分の知っていることだけでなのかもしれない。


そうではない彼を知っている人がいる証に、その左手の薬指には細いプラチナリングが光っている。


「よお」


彼――深水和哉は紗江子を見るなり片手を挙げてきた。



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