ダイス



「好きなったら、自分が破滅するかもしれない。自分の思う道を進めないかもしれない。そんな相手を好きになる気持ちを止めることって可能ですか?」


他人が割り込んでどうこう出来ることではないのは分かっている。


こういった場合に限らず、恋愛なんてそんなものだ。


でも、憧れるからこそ、そうなって欲しくないと思うのはエゴなのか。


紗江子からしたら、余計なお節介だろうか。


「……それ、自分の話?」


笹木は大きく煙を吐き出して訊いてきた。


それは溜め息にも似ている。


「違います」


紘奈はふるふると仔猫のように首を横に振った。


笹木はそれに、あ、そう、と短く答えた。


「そんな抽象的な説明じゃ、何にも言えない」


そう続けてから、煙草を灰皿に放る。



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