ダイス



「自分も今しがた耳にしたんです。あと、マスコミにも発表しないかもしれないそうですよ」


長谷部は眉を下げて小声で答えた。


過去の未解決事件が再び始まる。


それは警察にとって大きな汚点となるし、嘸や(さぞや)世間やマスコミに叩かれるだろう。


その時に犯人を逮捕出来なかったから、新たな犠牲者が生み出された。


週刊誌に載るだろうえげつない言葉の数々を紗江子は想像した。


そんなの、仕方の無いことじゃないの。


警察の汚点だとか、そんなことは関係ない。


逮捕出来なかったのは事実なのだ。


勿論、それで新たな犠牲者が出てしまったことも。


自分が身を置く組織の汚さにうんざりすることもある。


それなら、自分が捕らえればいいだけの話だ。


紗江子はそう強く思い、身体を前に向けた。







.
< 19 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop