ダイス



「ああ……えっと、あの……」


紘奈は言い出しづらそうに視線をさ迷わせた。


それだけで彼女が何を言いたいのかは分かる。


紘奈は洞察力のある女性だ。


この間話しただけで、紗江子が明良をどう想っているかは容易に察しがつくのだろう。


紗江子は紘奈に軽く微笑んでみせた。


「大丈夫。むしろ、向こうからやって来てくれるなんて、ラッキーくらいに思ってる」


嘘、ではない。


確かにそう思う感情もある。


それは女としての感情ではなく、刑事としての感情だろう。


それでも紘奈はいまいち納得出来ないのか、表情を微かに歪めて、ならいいんですけど、と言った。







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