ダイス



二回コール音がしたところで雪音は電話に出た。


もしもし、という声は何処か怯えているように感じる。


「何かあったか?」


本来言おうとしてたことを飲み込み、深水はそう訊いた。


雪音は一瞬の沈黙を作ってから、喋り始める。


『今さっき、新井君から連絡があった』


このタイミングで。


深水は固唾を飲んで、雪音の次の言葉を待った。


『……もう直ぐ迎えに行く、て』


雪音は微かに声を震わせて言った。


その言葉に沸き上がる感情は何か。


殺人犯の分際で。


そんなことではない。


雪音がいなくなるかもしれない。



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