ダイス



「何か分かったことある?」


明良は冷蔵庫の前に立ちながら訊いてきた。


紗江子はないわ、と答えながら彼の行動を観察する。


明良は冷蔵庫からラップのかかった皿を取り出し、それを電子レンジに入れた。


「……帰ったと思った」


明良の背中に言葉を掛けると、明良は静かに振り返った。


キッチンは暗くて、その表情は見えない。


何を考えているのか。


「帰る場所なんてないからね」


明良は顔を電子レンジに戻して答えた。




.
< 211 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop