ダイス



「……前に、理由のない殺人なんてない、て言ってたわよね」


紗江子はスプーンを置いて明良に言った。


「言ったね」


明良は自らの手元に視線を落として答える。


「なら、貴方の殺人にも理由があった、ていうことよね」


そうでないなら、あんなことは言わない。


「そうだね。あるよ、理由」


明良はまだ視線の先を変えない。


その、十人もの人間を殺した手を見続けている。


あの手で、十人もの人間を惨殺したのだ。




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