ダイス
「それは、聞いてからでないと分かりません」
紘奈は低めの声を出して答えた。
人と対峙するのは如何なる時でも覚悟が必要だ。
そんな当たり前のことがすっぽりと頭から抜けていたのだ。
事件の情報を聞き出す。
それしかなかったのだ。
自分が向き合う相手が日本の事件史に残るような殺人鬼だというのに。
「だから、私がした質問には全て答えて下さい」
紘奈は大きく息を吸ってからそう言った。
胸元に付けた小さなブローチには高性能のマイクがついている。
会話の内容は警視庁にいる深水達に全て聞こえるようになっているのだ。
一人で来るように、そして自分を逮捕したりしない。
それも明良が出した条件だった。
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