ダイス



「何で、だったかな?」


明良はコーヒーカップに手を伸ばしながら言った。


「はぐらかさずに答えて下さい」


緊張しているのか、膝の上で握った拳の中にはうっすらと汗が浮いている。


「たまたま、知ったんだ。俺達の共通点を。それは本当に偶然だったんだよね」


明良は言ってから、コーヒーを一口飲んだ。


ミルクも砂糖も入れていないそれはただの真っ黒な液体だ。


「共通点?」


ここに事件を解くヒントがあるかもしれない。


深水が以前そう言っていたのを思い出した。


「会話をしてて、本当にたまたま知ったんだ」


明良は大事なことをわざと省いて喋っているように思えた。


いや、実際そうなのだろう。




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