ダイス
「え? 存在?」
紘奈は目を少しだけ見開いた。
質問の意味が分からない。
「そう、自分がこの世にいるという証明」
明良はそう言って少しの間目を閉じた。
閉じた瞼の裏で眼球が動いているのがよく分かる。
瞼の皮膚が極端に薄いのだろう。
「君の名前が本当だという証明は? 君の誕生日が本当だという証明は? 君が今住んでいる場所が本当だという証明は?」
明良は早口で訊いてきた。
「えっと、免許証に、住民票、とか?」
紘奈は思い付くものを口にしてから気付いた。
明良と新井の共通点に。
そういうことか。
「それら全てに必要なものは?」
明良は紘奈が正解を導き出したことに気付いてか、唇の端を少し持ち上げた。
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