ダイス




「それなら、模倣犯の可能性も高いですね」


声を出したのはやる気をみなぎらせている蓮だ。


「そうだな」


深水がそれに怠そうに答えながら煙草に火を点けた。


ヘビースモーカーなのも相変わらずか。


紗江子はライターを持った左手に光る指輪に目を向けた。


何も知らない。


何故急に結婚したのかも、相手がどんな人なのかも。


まあ、あたしに言う必要なんてないんだけど。


そう考えると自嘲に似たものが込み上げてきた。


「深水さん。此処、禁煙です」


それを分かっていても紗江子も蓮も何も言わなかったのだが、絋奈が唇を尖らせて注意をした。


深水の階級は警部だし、元より彼はエリートだ。


そんな彼に軽々しく注意など出来る者はこの場にはいない。


だが絋奈は別のようだった。




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