ダイス
簡単に聞き出せるとは思わなかったし、ここから簡単に新井に辿り着けるとも思っていなかった。
だが、予想以上に収穫がなかったのも確かだ。
聞こえてくる話に深水は溜め息を吐いた。
共通点は予想外だったのか、予想の範疇だったのか。
それすらも分からない。
そこから何故、殺人に発展したのか。
逮捕しようがないと踏んだのか?
深水はスーツの胸ポケットに入れた煙草の箱に手を伸ばした。
実際、それには近い。
恐らく、十年前に彼を逮捕出来なかったのは彼の存在が何処にもなかったからだろう。
だから彼に辿り着く術がなかったのだ。
犯人の目星すらつかなかったのは、犯人の痕跡がなかったから、というのが当時の見方だった。
しかしそれは、痕跡がなかったのではなく、痕跡を残しようがなかっただけのことだ。
だが、逮捕しようがないという理由だけであんな事件を起こすものか。
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