ダイス



現に新井は絶対逮捕出来ないわけではないと理解していた。


どうにかして逮捕する術を作る。


勿論、そうなるだろう。


それを明良が思い至っていないわけがない。


明良は決して頭の悪い人間ではない。


むしろ、いいと言えるかもしれない。


なら、何故。


深水はちらりと紗江子の横顔を見た。


鼻が少し低い以外はこれといった欠点のない顔立ち。


紗江子は深水の視線に気付いたのか、目線を此方に向けた。


濃い茶色の目は深水が何を言いたいか理解しているようだ。


そう、彼は紗江子になら話すのかもしれない。


この二人の間にあるものを想像するのは容易だ。


気付かないわけがないが、取り敢えずは気付かない振りをしている。


紗江子個人に話を聞かせたとして、紗江子がその全てを報告するかは分からない。


そう考えて、今回紘奈に話を聞きにいかせたのだ。




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