ダイス



「別に、俺達しかいないんだからいいだろ」


深水は絋奈の注意になど耳も貸さずに煙を吐いた。


絋奈は一応、キャリアと呼ばれる人種らしい。


愛くるしい見た目に何処か抜けたような性格。


そのどれもがキャリアという言葉とは結び付かない。


「そういう問題じゃないんです。ルールは守って下さい」


絋奈は強い口調で言い放った。


どうやら、愛くるしい見た目とは正反対に気が強いようだ。


「何だよ、笹木と離されたからってそんなにぴりぴりすんなよ」


深水はそう言ってから渋々まだ長い煙草を缶に放り込んだ。


深水がこんな小娘の言うことを聞くのも珍しい。


紗江子の知る限り、深水はそういった男ではなかった。


「笹木さんのことは関係ないじゃないですか」


絋奈はそう言って一層口を尖らせた。




.
< 24 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop