ダイス
「別に、俺達しかいないんだからいいだろ」
深水は絋奈の注意になど耳も貸さずに煙を吐いた。
絋奈は一応、キャリアと呼ばれる人種らしい。
愛くるしい見た目に何処か抜けたような性格。
そのどれもがキャリアという言葉とは結び付かない。
「そういう問題じゃないんです。ルールは守って下さい」
絋奈は強い口調で言い放った。
どうやら、愛くるしい見た目とは正反対に気が強いようだ。
「何だよ、笹木と離されたからってそんなにぴりぴりすんなよ」
深水はそう言ってから渋々まだ長い煙草を缶に放り込んだ。
深水がこんな小娘の言うことを聞くのも珍しい。
紗江子の知る限り、深水はそういった男ではなかった。
「笹木さんのことは関係ないじゃないですか」
絋奈はそう言って一層口を尖らせた。
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