ダイス




「十人で止めた理由は?」


「……飽きた、から。幾らそんなことをしても、自分がこの世界に存在しないのは変わらないから」


そんな理由で止めた。


紗江子は思わず息を飲んだ。


理解出来ないどころの話ではない。


「……あたしに近付いたのは?」


「新井が起こした事件を知って、あいつを探してる時に偶然君を見た。それで、警察に近付くか、また賽子で決めた」


その時、彼が決めたのと違う目が出ていれば。


彼に抱かれた身体の芯は冷えきっている。


彼と出会わないほうがよかったのか。


でも、出会わなければ事件の真相に辿り着くことはなかっただろう。


この、何とも言えない感覚が疎ましかった。




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