ダイス




「うーん、それは犯人なりに何かの意味、若しくは儀式のようなものだとも思われます。上半身を焼くのも。被害者の身元がばれたくないのなら、まず所持品を奪うはずですから。でも被害者の所持品からなくなっていたものはありません」


「儀式……」


紗江子はその言葉を口の中で小さく反芻した。


上半身と下半身を切り離し、上半身だけ焼くという儀式。


儀式という言葉は古代ヨーロッパの黒魔術のようなものを連想させる。


絋奈がそういった意味合いで言っているのかは分からない。


「年齢も十九歳、と一致しています。十九歳、というのに意味があるのか、それとも十九、という数字に意味があるのか」


絋奈はぺらぺらと推論を立てていく。


その隣では深水がからからと歯に飴を当てて音を出している。


絋奈の口から出た話は全て深水も思い付いているだろう。


それほどの男が未解決捜査班にいる理由。


紗江子は三年前の出来事を不意に思い浮かべた。









.
< 30 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop