ダイス
玄関の電気は消えていて、廊下にはリビングから洩れる灯りがうっすらと見える。
そこからテレビの音か、男の笑い声が微かに聞こえる。
深水は溜め息を吐いた。
玄関の電気は点けておいてくれ、と何度も言ったはずだ。
なのに点いていない。
「ただいま」
リビングの戸を開けて、テレビを見詰める背中に声を掛ける。
白いTシャツにジーンズという素っ気ない出で立ちは凡そ若い娘のものとは思えない。
「おかえり」
娘は振り向き、微笑みもせずに言った。
その顔立ちは大きく二重のはっきりと瞳に、筋の通った鼻、ふっくらとした唇、と人目を引く程だ。
だが適当に伸ばしたと思われる髪は簡単に纏められていて、化粧気は全くない。
きちんとした格好をすればモデルさながらなのに。
深水は直ぐに視線を逸らす彼女に対してそう思った。
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