ダイス



「素手で触るなよ」


紘奈はその言葉に表情を歪めながらビニール袋に入った賽子を受け取った。


「言われなくても分かってます」


そう返すと目の前の人物は鼻で笑った。


「あ、あたし、笹木さんに敬語使う必要ないじゃないですか」


紘奈は急に思い至ったことに声を高くした。


「別に、敬語使ってくれてもいいですけど」


わざとらしく敬語を使う笹木に紘奈は更に表情を歪めた。


笹木より自分の方が年下だが階級は上だ。


だが、前回の事件の時に身分を偽っていた経緯から未だに敬語が抜けない。


「で、これから何か見付かったんですか?」


そして、結局こうして敬語を使ってしまう。


「何も」


笹木は短く答えた。




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