ダイス
「賽子は……単に、目印みたいなものでしょうか」
蓮が紗江子の隣で賽子を見ながら口を開いた。
蓮の声は舞台俳優か何かのようによく通るし響く。
「目印?」
「ああ、はい。目印、というか、何て言うんですかね。自分が殺したんだっていうものなのかな、と」
蓮は上手い言葉が出てこないのか、頭を掻きながら唸った。
蓮と同じ考えをつい昨日、紗江子も微かにだが思った。
「それなら、殺し方だけで嫌という程分かるだろ」
それに対し深水が意見する。
「いや、でも、それだと模倣が出たとしても自分だっていうことになってしまうから、自分がやったという証拠というか……」
蓮は自分より上の立場の人間に発言するのが苦手な性格なので、こうしてしどろもどろになってしまうのだろう。
「じゃ、その推理から行くと、今回の事件は過去のものと同一犯、てことだなぁ」
深水があまりに嫌味ったらしく言うので、蓮は口ごもってしまった。
「ちょっと。真面目に話し合って下さい」
紗江子はそれに溜め息を吐きながら深水を止めた。
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