ダイス
「殺人犯係の警部補ともなると、こんな出勤も認められるわけだ」
蓮とは違う声に紗江子は息を吐いた。
三十代前半の女で警部補。
しかし、そこらの連中が簡単に入ることが出来ないレベルの大学は出ている。
キャリア、とまではいかないがエリートには片足を突っ込んでいる。
それでも女というだけで嫌味を言われることは少なくはない。
しかし、こんなふうに堂々と言ってくる若い男は紗江子が知る限りでは一人しかいなかった。
「笹木」
紗江子は声の方に顔を向けた。
そこには彫りの深い顔立ちをした長身の男が立っている。
蓮にしろ彼にしろ、どうして此処には背の高い奴が多いのだろう。
百六十に満たない自分から見ると羨ましいを通り越して憎くすらある。
男でも女でも身長が高い方が威圧感を煽れる。
なのでこうして少しでも高く見せようとヒールは五センチ以上と決めていた。
それで足が疲れようとも変えるわけにはいかないポリシーだ。
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