ダイス



「ええ、いいけど。浅川紗江子」


紗江子はそれを微笑ましく思いながら答えた。


すると彼はほっとしたような表情を作る。


「俺は、北見明良」


彼――明良はそう言ってまた笑った。


それを可愛いと思うのは胸の何処の感情なのだろう。


だが、それは温かい想いのはずなのに、それとは裏腹に冷たい何かが胸の中に一滴落ちた。






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