ダイス




今考えるべきは事件のことだ。


紗江子は鞄から資料を取り出した。


彼に声を掛けられる前に気付いたことを一生懸命思い出そうとした。


賽子についてだ。


紗江子は今回の事件の現場写真を引っ張り出した。


賽子が転がされているのは焼かれた上半身の近く。


そう、「転がされたのか」「置かれたのか」。


このどちらかで意味がぐんと変わるように思えた。


賽子が転がされたのだとしたら、出ている目は出鱈目だ。


そして、置かれたのだとしたら、その目は何かを示していることにならないか。


紗江子はくしゃ、と前髪を触った。



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